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東京地方裁判所 昭和30年(行モ)20号 決定

右申立人等は当裁判所に相手方が昭和三十年三月二十二日為した退去強制令書の発布処分が違法であるとして、その取消の訴(昭和三十年(行)第八八号事件)を提起し、且つ右退去強制令書の執行の停止を申立てた。当裁判所は、相手方の意見をきいたうえ、考えると行政事件訴訟特例法第十条による行政処分の執行停止は、当該行政処分に対する取消の訴が提起された場合に為される保全的性質を有するから、執行停止をするには、本案請求が法律上理由ありと合理的に推測できるものであることを要すると解すべきである。しかるに申立人等は、いずれも中華民国の国籍を有する外国人で昭和二十九年一月十一日出入国管理令第四条第一項第四号にいう観光客の資格で本邦に入国したもので、その在留許可期間は当初二カ月のところその後期間の更新を受けたが、同年七月十四日を以て終了していることは本案訴状に記載しているところである。そうすると、申立人等は出入国管理令第二十四条第四号ロの規定により本邦から退去を強制せられてもやむを得ないものであつて、申立人等は、申立人王玲狗が肺門淋巴線結核で治療中であり、又同王玲珠が義務教育期間中で、東京都四谷中華女学校に在学中であるにも拘わらず前記退去強制令書を発布した処分は著しく公平かつ妥当を欠き、又基本的人権を無視した違法処分であると主張するが、退去強制令書の執行を受ける者が病気等の場合はその執行に当つて考慮さるべきであつて、右の事実があるからといつて、本件退去強制令書の発布処分そのものを違法ならしめるものではなく、従つて申立人等の本案請求は法律上理由があるとは到底認め難い。

よつて申立人等の本件申立は爾余の点について判断するまでもなく理由がないと認め、次のように決定する。

申立人 韓根妹 外二名

相手方 東京入国管理事務所長主任審査官

主文

本件申立を却下する。

(裁判官 飯山悦治 岩野徹 井関浩)

(目録省略)

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